株式会社MOZU

温熱療法について

近年注目を集めている温熱療法。

身体を温めることによって免疫力を活性化させ、病に打ち勝つ治療法です。

特にがんの標準治療(手術、抗がん剤、放射線)との併用で用いられます。

副作用が軽減される

術後の回復が早くなる

などの効果があります。

代表的な温熱療法についてご紹介します。

医療機関での温熱療法は医師の判断で行いますが、自宅で温熱療法を実施する場合は特に注意が必要です。

気を付けるべき点を押さえて、温熱療法を活用してください。

代表的な温熱療法

温熱療法と言っても様々なものがあります。

ここでは代表的なものを5つご紹介します。

ホットパック 表在熱 伝導
パラフィン浴 表在熱 伝導
極超短波療法 深部熱 輻射
超音波療法 深部熱 輻射
赤外線療法 表在熱 輻射

1 ホットパック

ホットパックの特徴

ホットパックとは温かい物質で患部を覆うことによって、

その部の組織を加熱して治療に役立てようとする温湿布の総称です。

保温性の高いシリカゲルやベントナイト等を厚い木綿の袋に入れ、

パック状にしたものを加温器(ハイドロパッカー)で80~85℃の温度で15分以上加温してバスタオル等で包み、患部にベルト等で取り付けるのが一般的です。

特に脂肪組織が多いところでは比熱の小さい脂肪に熱が集中し、筋組織に伝導しにくくなります。

さらに、ホットパック療法を行うと、視床下部の温度調節機構の作用で、血管拡張作用のあるヒスタミン様物質の分泌等により皮膚の毛細血管が拡張し、皮膚内の血流は2倍以上になります。

このことにより血行が促進され、痛みの産物であるヒスタミン、ブラディキニンが除去され痛みが軽減されます。

また、皮膚温度受容器の熱刺激によるγ線維の伝導が遮断されると、筋紡錘の活動の低下により一過性の筋緊張が軽減されます。

ホットパックの禁忌

ホットパックの禁忌は以下の通りです。

  1. 急性期の炎症(出血、腫脹などが強い場合は特にダメ)
  2. 知覚障害がある場合
  3. 皮膚疾患、感染巣がある部位
  4. 腎、心疾患による強い浮腫、循環障害がある場合
  5. 出血傾向の強いもの(血友病)
  6. 収縮期血圧90㎜Hg以下のとき
  7. 悪性腫瘍

 パラフィン浴

パラフィン浴の特徴

パラフィン浴装置に融点43~45℃の固形パラフィンと流動パラフィンを 100:3の割合で混ぜ合わせ、加温し溶解したパラフィンの中に直接患部を浸けて行います。

治療部位は、通常上肢・下肢に限られます。

手指や足指のように凸凹のある形状の 複雑な部位でも、細かいところまで一様にパラフィンが付着して均等に加温できるのが特徴です。

パラフィンは、熱伝導率が小さい(水の0.42倍)という性質があり、熱せられ溶解したパラフィンの中に患部を入れても熱がゆっくり生体に放出されるので、湯に比較して熱く感じず、火傷を起こしにくいという特徴があります。

また、パラフィンは比熱が極めて高いので、パラフィンの槽から患部を出してもなかなか冷めません。

パラフィンが空気にさらされると、皮膚-薄い空気層-パラフィン被膜の層構造となり保温性が高くなります。

パラフィン自体は水分を含まず乾熱ですが、発汗による汗が被膜との間にたまるので実際は湿熱的性格を持ちます。

パラフィン浴の禁忌

パラフィン療法の禁忌は以下の通りです。

  1. 急性期の炎症(出血、腫脹などが強い場合は特にダメ)
  2. 閉鎖不完全な開放創
  3. 知覚障害がある場合
  4. 皮膚疾患、感染巣がある部位
  5. 腎、心疾患による強い浮腫、循環障害がある場合
  6. 出血傾向の強いもの(血友病など)
  7. 悪性腫瘍

 極超短波療法(マイクロ波)

極超短波療法(マイクロ波)の特徴

治療器としては波長12.5cm、すなわち周波数2450MHzのマイクロ波を使用されています。

治療機器の原理は、マグネトロンと呼ばれる特殊な2極管により極超短波を発生させるというものです。

生体の深部組織から温め、特に水分をよく含む筋膜付近を温めるという生理作用があります。

極超短波療法(マイクロ波)の禁忌

極超短波療法(マイクロ波)の禁忌は以下の通りです。

  1. 炎症の急性期
  2. 火傷
  3. 結核
  4. 悪性腫瘍
  5. 感染症
  6. 出血傾向
  7. 血栓症
  8. 血友病
  9. 感覚脱失
  10. うっ血のある組織
  11. 浮腫
  12. 虚血性組織
  13. 挿入金属体
  14. ペースメーカー
  15. 補聴器
  16. 成長期の骨端線
  17. 生殖器官
  18. 内分泌器官
  19. 妊婦の腹部
  20. 腰部
  21. 眼球

金属への熱収束が大きいため火傷に注意するする必要があります。

骨折によるプレート固定など身体内部に金属が挿入されている部位に極超短波を照射するとその金属に向かってエネルギーが集まり、その表面で反射されることにより周囲の軟部組織を異常に加熱してしまう危険性があるため注意しましょう。

 超音波療法の特徴と禁忌

超音波療法の特徴

超音波治療器は、治療部位の深さに応じて1MHzと、3MHzの周波数が利用されています。超音波は空気中に伝達されないため、超音波治療器と生体との間には、伝搬物質が必要となります。

これをカップリング剤と言います。

電磁波を生体に照射しても脂肪が強力な絶縁体となりますが、超音波はほとんど衰退しないで深部の組織に到達します。

また金属が挿入されている部位にも適応で、深部に照射できる治療法です。

これは金属で乱反射を起こして熱点を作ることがないことと金属の熱伝導率が高いので超音波エネルギーによる加熱が金属全体の温度上昇にまでは至らないと言う理由によります。

超音波療法の禁忌

超音波療法の禁忌は以下の通りです。

  1. 知覚障害
  2. 悪性腫瘍
  3. 急性炎症
  4. 肺結核、血友病
  5. 血栓性静脈炎
  6. 眼球
  7. 生殖器
  8. ペースメーカー

ちなみにマイクロ波と異なり、超音波は金属挿入部への照射も可能です。

ただし、結合の人工関節や合成樹脂成分が用いられている領域への照射は禁忌となります。

 赤外線療法の特徴と禁忌

赤外線療法の特徴

光線療法の一種ですが、最近特に注目を集めているのが赤外線療法です。

赤外線は、太陽光線に含まれる熱放射線の一種で、その中でも50~60%の割合を占め、生体に吸収されて組織の温度を上昇させる性質が最も強いと言われています。

また、赤外線はさらにその波長によって近赤外線(波長:0.75~1.5μm)、中赤外線(波長:1.5~3μm)、遠赤外線(波長:3~6μm)の3つに分類されます。

治療効果は、皮膚表面の温熱作用がほとんどで、その深達度はせいぜい10mmとされています。

従って皮下組織、血管、神経、リンパ管に与える温熱効果は大きくはありません。

生理作用の効果は、赤外線を照射すると血管を拡張し、皮膚に充血を起こさせ新陳代謝の活性化、鎮痛作用があります。

赤外線療法の禁忌

赤外線療法の禁忌は以下の通りになります。

  • 1急性期の炎症(出血、腫脹などが強い場合は特にダメ)
  • 2知覚障害がある場合
  • 3皮膚疾患、感染巣がある部位
  • 4ペースメーカ

注目の遠赤外線

赤外線の中でも遠赤外線という波長は健康・美容分野で注目を浴びています。

遠赤外線ヒーター、遠赤外線コタツなど聞いたことがあるかもしれません。

(もっとも、1%でも遠赤外線が出ていれば遠赤外線〇〇と言えてしまう現状もありますが)

質の良いもので、家庭で使えて医療機器認定を受けているものもあります。

家庭で温熱療法ができればクリニックに通うより経済的に負担が少なく、ストレスもかかりません。

一度検討してみても良いでしょう。

温熱療法の価格

温熱療法は保険が適用できるものから自由診療まで様々です。

なので価格もバラバラとなります。

保険適用では、マイクロ波、ラジオ波を使った温熱療法で

深部加温9000点(9万円)

浅部加温6000点(6万円)

となっています。

3割負担で深部加温27000円、浅部加温18000円ということです。

温熱療法は自由診療のところが多く、一回数千円~数万円、中には1回10万円を超える場合もあります。

クリニックでの温熱療法の他に、普段の生活習慣を改善することでも体を温めることはできます。

食事、運動、睡眠の質を上げて体を温かい状態に保つことが大切です。

クリニックで温熱療法を実施する場合は医師の判断になりますが、ご自身でも知識を持っていたほうがより安心です。

温熱療法は基本的に副作用がほとんどありませんので、禁忌さえ理解していれば非常に効果的な治療法と言えるでしょう。